古文を読むと、今の読み方と違う表記がよく出てきます。
そのなかでも「アフ」と書いて「オー」と読むのは、 見た目と読みが大きく違ってて戸惑いがち。
今日はこの変化の歴史を調べました。 古文ちゃんとやった人は覚えてるやつですね。
いつかきっと役に立つ日本語の話
韓国語と日本語の音のずれを調べていると、 かなりの頻度で日本語の歴史や仕組みに踏み込んでいくことになります。
知らなくてももちろん韓国語は勉強できるんだけど、 知っていればよりロジックに沿って納得感を持って韓国語を覚えられるはず。
というわけで、韓国語勉強には遠回りなように見えるけど、 きっとそのうち役に立つはずの日本語のトピックをまとめるコーナーです。
まずはハ行転呼があった(平安時代)
「たふとし(尊し)」=「トートシ」を例に考えてみます。
まず「ふ」の発音ですが、元々は文字通り「ふ[fu]」と発音していましたが、 平安時代に「ハ行転呼」と呼ばれる音韻変化が起きて、語頭以外のハ行音がワ行音に変わりました。
その結果、「たふとし」が「タウトシ」と発音されるようになります。
ちなみに、「ヒ・ヘ・ホ」については、ワ行音に変わったあと、 さらにア行音と発音が同化するという変化を辿っています。
ヒ・ヘ・ホ
↓↓
ヰ・ヱ・ヲ
↓↓
イ・エ・オ
続いて長音化と開合(鎌倉時代)
鎌倉時代に入ると、「アウ」「キャウ」などの[au]の音が、 「アオ」「キャオ」などを経て、すべて「オー[ɔː]」と長音化する現象が起きました。
この「オー[ɔː]」を開音と言います。
現代日本語の「オー[oː]」とは少し違い、口を大きく開けて発音する音とされています。
これで「たふとし」が「トートシ」になりました。
ちなみに同じ頃、「オウ(フ)」「キヨウ」「エウ」などの音のグループも、同様に「オー[oː]」と長音化しました。
こちらの「オー[oː]」は、開音よりも口を狭めて発音する音で、 合音と呼ばれています。
そしてすべてはひとつに(江戸時代)
こんなよく似た音を使い分けてたなんて昔の人はすごいなー、と思ってたけど、 やっぱりこの使い分けは難しかったらしく、ほどなく2つの音は合流していきます。
江戸時代には完全に区別がなくなったらしく、その後はどちらの音も「オー[oː]」と発音されるようになりました。
ただ一部の方言ではまだこの区別が残っていたりするらしく、人間ってすごいなと思わされます(なんだそれ)。
まとめ
というわけで、古文で「たふとし」が「トートシ」と読まれる理由を調べました。
韓国語との関連では、もともと[au]の音で入ってきた言葉が日本で[oː]に発音が変わっているため、 韓国語と音がずれているパターンが結構あります。
そのときは元の[au]発音に戻してあげると、ずれを解消できるケースがけっこうありそうです。
韓国語を勉強してるはずがなぜか古文の勉強がはかどりますね。。